2012年10月11日

通信記録やPC上のデータは確実な証拠にはならない

PC遠隔操作による脅迫事件について、崎山伸夫氏と小倉秀夫氏の昨日辺りから続く(とても不毛に見える)議論を見ていた。

現在、PCに遠隔操作用に、アンチウイルスソフトウェアで検出できないウイルス類を送り込むことは不可能ではなく、実際に今回の件で実行できてしまった。
同時に、Web・PCに関する一定の知識を持っている人にとって、PCにウイルス等が感染し、第三者が遠隔操作してその後隠蔽のために削除された、という偽の記録を作ることはむしろ簡単である。

これは既に、PC上のデータには確実な証拠能力は無いことを意味する。弱い状況証拠として採用されることは有りうるだろうが、不確実な状況証拠だけでは有罪になり得ない。
同様に、PC上のデータが証拠能力を持たないのであれば、PCが利用しているIPアドレスとの通信記録も確実な証拠能力を持つわけではなくなる。つまり、PCを誰が制御していたかの証明にならない。

これがもし電話番号だったら、警察・裁判所も冷静に対応できたかもしれない。
例えば、置引きされた携帯電話から脅迫電話がかけられるということは有りうることであり、通話記録それ自体は確実な証拠と言えない
脅迫電話の録音テープと本人の声紋の一致、凶器準備、利害関係の確認といった他のより確実な物的・状況証拠を積み上げる必要があるのは明らかだ。

今回の事件を脅迫電話にたとえるならば、家に鍵がかかっていない長閑な田舎の固定電話を用い、不法侵入した第三者が役所に脅迫電話をかけ、録音テープのような他の物的証拠なく何も知らない家主を突然逮捕した、ということだ。逮捕理由は電話機に残る通話記録を隠される可能性があるため。そして受話器からは他人の指紋が見つかった。

今回の事件で警察が捜査を逮捕時点で捜査を打ち切った場合、釈放される事なく有罪にされた可能性がある。警察が調べないほうが有罪になる確率が上がるというのは、あってはならない状況だ。裁判所がまともであればいいが、今回の逮捕状を出したのは裁判所だ。少なくとも対応した裁判所に本件について適切な判断力があったとは考えにくい。最高裁判所なら、罷免に投票できるが、今回の件で逮捕状を許可した裁判官の名が明かされることはないだろう。


今後同様の事件が起きた場合、例えば爆破予告なら、必要な火器など凶器準備の証拠を集める必要がある。
PCのデータやIPアドレスの記録など電磁的記録の証拠能力がほぼゼロである以上、購入履歴など直接的な証拠となりうる第三者のデータなり物的証拠なりが必須で、それまでは継続監視するなど、逮捕以外の方法で安全を確保するしか無い。

国外などへ逃亡の恐れがあったり、凶器を処分される恐れが高い案件であれば、逮捕は必要だろうが、大義名分である証拠処分の容易性を証明するのは警察側の責任だ。
そもそも証拠能力のないPC上のデータを消される可能性について、逮捕の必要性を論ずること自体的はずれに過ぎる。


現在、インターネット上の何かいうこと=データの複製はタダだ。「今日誰かを○します」という書き込みはいくらでもできる。警察が全てまともに取り合うならば、dDoSになることは明らかだ。

警察は「嘘を嘘と見抜ける能力」を育てて、ネット上の通信を全て本気にして近視眼的に逮捕勾留するのではなく、本当に本人が犯罪予告している緊急な案件を見分ける力を育てなければならないのではないだろうか?
今回の件は、せいぜい利用された可能性のあるPCを差し押さえして被疑者を監視をすればいい案件だったように思われる。

逮捕に必要な、証拠隠滅や逃亡の恐れを証明する必要性があるのは逮捕する警察の仕事だ。
逮捕した上、自白を強要したあとで、証拠がなくなりました、なんて論外。別件逮捕と同根。



posted by ko-zu at 22:09| Comment(0) | TrackBack(0) | セキュリティ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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